TIME ZONE 那須大亮 ボーイズラブ文庫


俺、ではなく、私。

まだ眠い目を擦(こす)りつつ、山岸(やまぎし)トオルはかすれた声で朝の挨拶(あいさつ)を口にした。噺が始まった。

雅也は、昭人を見つめた。モトキはいきなりシャツを脱ぎ、上半身裸になって来いというように手を動かした。「普通はね、朝ってお腹空(なかす)いているもんなんだよ」。窓際から眺める空には東雲さえたなびいている。「あるかな、そんなもん」。二人で顔を見合わせる。

前髪を撫でるように触られ、慶斗はびくっとして目を開けた。モダンな店構えの〈鳳凰閣〉は六本木(ろつぽんぎ)という場所柄(ばしよがら)、夜ともなれば着飾った客で占(し)められるが、最近ではランチメニューを用意していることもあり、昼時はそれほど気を遣(つか)うこともなく楽に食事を楽しめる店だった。深々と頭を下げた水穂に、相手は頓着(とんちゃく)せず、勝手に手を引いて歩きだした。信じがたいセリフを、期待まじりに復唱すると、皓市が黙って頷いた。一応、スーツは着用してきた。二狼は大袈裟に眉を跳ねあげ、指に挟んだ煙草の先で、利根川の眉間を指し示した。慶斗をベッドに座らせ、長森は壁際に詰めるよう手で指図した。

「はい、カーディ王子」。先にバスタブを跨(また)いだ飯島に手を引かれるまま、続いて洗い場に立ったトオルは、真っ直ぐ見下ろす瞳(ひとみ)から恥ずかしげに視線を逸(そ)らし、消え入りそうな声を出した。

「そろそろ帰ろう」。その声に、竜弥は誤解を正そうと口を開く。本気?耳を疑う。冷たい液体が喉元(のどもと)を通りすぎていく感触に、尖(とが)ったあごをわずかに反らして安堵(あんど)の表情を浮かべたトオルは、缶(かん)を机に置くと短いため息をもらした。


ボーイズラブコミック作品紹介


バレンタインデーが間近に迫る頃、仕事先で顔を合わせた吉井と、久しぶりに話をしたトオルは、彼が恋人とのあいだに問題を抱えているように感じてしまう。その話を聞かされた飯島は、気にかかる相手だけに放ってはおけず、トオルに黙って吉井のアパートを訪ねた。あらぬ疑いを抱かれないようにと、飯島は気を遣うのだが、吉井のことばかりを心配する様子が、トオルには納得できず……。

タイトル:終わらない週末ブロークン・チョコレート
著 者 名:有馬さつき
レーベル:奪われた白衣
発 行 元:講談社

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