トランジスタGガール 鈴木桂治 BL小説


下を向いていた敦行が、ゆっくりと顔を上げた。ふと要は顔をあげた。彼が身に付けている制服の襟や袖口にあしらわれた金糸の装飾と同じ色の髪が、端正な横顔を彩っていて、その美しさに溜息が零れた。たった一日二狼が留守にしていただけで、もう二度と会えないような気がしていた。「なにが?」。入社以来、担当しているヘアヌード写真集のシリーズは、予算を低く抑(おさ)え、なおかつ売れるものをと企画されたのだが、今ではそれなりの予算も取れるようになり、海外ロケに行けるほどにまでなっていた。

淡(あわ)いブルーのパジャマを着た華奢(きやしや)な身体(からだ)と、寝起きそのままを物語る乱れた髪。「え……ロンドン……?」。パンドラが馬車を横付けした正面玄関で、ユダに付き添うと言ったルカだが、最後には見送る立場になってしまったのを悔いているようだった。その動きでふいに温(ぬく)もりが遠ざかり、眠りの底から呼び戻されたトオルは、けだるそうに何度か瞬(まばた)きを繰り返し、それから視線をゆっくりと飯島の胸から顔へと移した。世界中の誰もがしてるって、あの。やっと玲央奈の手が、鎧の体を引き離そうと動き出した。そんな自分もまた、見たくないものや知りたくないことに背を向けようとしているのだろう。

「衣緒に聞いたぞ。お前、ロンドンに行くんだってな。だけどお前、それでいいのか?兄貴は他の女と結婚しちまうんだぞ?」。立て続けに鳴らされ、さすがに広瀬も愛撫を中断することにしたようだ。

押しつけられた唇が角度を変え、実生の下唇を軽くはさむように吸った瞬間――――実生は広瀬を突き飛ばした。

トオルは大きなため息とともに呆(あき)れた声を発し、仰(の)け反(ぞ)るようにして天井を見上げた。初めの頃、厨房でだが、カップを割ったことがあるからだ。「絶対行かせねえ」。必死の思いで紡いだ言葉も、あっさりと英彦に却下され、さらなる侮辱の言葉を浴びせかけられてしまう。

真冬の太陽は既(すで)に空高く昇り、明るい陽射(ひざ)しを落としているが、きっちりと下ろされたブラインドからは一筋の光も射し込まず、まるで外界から閉ざされているかのように、ゆっくりと時間は過ぎていった。動きの止まった隙に、雅也の身体がのしかかる。「いい反応だ」。「もう遅いから片づけなくていいぞ」。男の笑顔が、にこにこからにやにやへと変わる。「でも、アシュリーは、オレの本当のパパじゃない……」。


ボーイズラブコミック作品紹介


飛行機の墜落事故から、奇跡の生還をした七海。その事故で家族を失くした彼は、幼なじみの明良の家で暮らすことになった。同じ家から同じ高校に通い、寝るのも一緒。恋人一歩手前の七海と明良は、周囲も驚くぐらいにラブラブだ。そんな、平凡で幸せな毎日を送る七海だけど、ある日体の不調を感じてしまう。これって事故の後遺症?!まつりが贈る、ウルトラハイパーラブコメディ。

タイトル:正義の味方で行こうっ!
著 者 名:高月まつり
レーベル:アイス文庫
発 行 元:オークラ出版

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